東北大学にて美食地政学講座「おいしい未来のつくりかた」3皿目を開催しました
2026年2月10日(火)、東北大学青葉山キャンパス 環境科学研究科 本館1階のSHOKU Labにて、美食地政学講座「おいしい未来のつくりかた 3皿目」を開催しました。当日は、飲食事業者、農業生産者、学生、行政、民間企業など多様な立場から32名が参加し、地域資源と食の未来について意見を交わしました。
基調講演①は、「ホヤ」の確保から加工、そして生食以外の新たな食べ方をアピールし続けることで国内消費量の拡大を目指す、株式会社涛煌(とうこ)代表取締役 佐藤文行氏より、「県境を越えた挑戦「道産子ぼや」」をテーマに講義いただきました。
東日本大震災や、震災後の禁輸措置で韓国への販路が断たれ、宮城県のホヤは大量に余剰・廃棄される状況が続きました。さらに、近年は海水温上昇による大量死が深刻となり、三陸沿岸は安定した養殖地とは言えない状況となったため、北海道での養殖への移行による挑戦が紹介されました。
北海道産ホヤは品質も向上し、市場評価も良くなっていますが、労働力・流通・季節制約など新たな課題もあります。また、殻付き流通が必ずしも鮮度保持に適しておらず、むき身・一次加工による流通改革が重要になるため、「ホヤをどう食べるか」だけでなく、どう生き残らせるか、産業として続けるかが最大のテーマであるとの説明がありました。


基調講演②は、宮城大学 食産業学群 フードマネジメント学類 庄子 真樹 准教授による「ホヤは不思議で美しい生き物」をテーマに、ほやの基礎知識、生物学的特徴、栄養価、産業的課題、そして新たな活用可能性について講義いただきました。
ホヤの名称は古語に由来し、『土佐日記』から登場します。生物学的には貝ではなく脊索動物(人に近い系統の動物)のため、心臓、生殖器官、神経節、消化器官などをもち、生物学の研究材料としても使用されていることを示されました。
栄養面では、水分が多く脂質が少ない一方、鉄・亜鉛などのミネラル、EPA・DHA、タウリン、プラズマローゲンなど機能性成分を豊富に含みます。特に夏はタンパク質やアミノ酸量が増え、旨味・甘味成分が高まり最もおいしい時期とされます。
庄子氏は、廃棄される殻に含まれる動物由来セルロースに着目し、ナノファイバー化することで新素材開発が可能となり、将来的にはバッテリー触媒の代替材料になる可能性も研究されています。会場には、ホヤの殻を漂白して色を抜いたランプも紹介されました。総じて、ホヤは生物学的にも栄養学的にも価値が高く、産業・資源循環の観点からも持続的活用を考えるべき重要な地域資源であると結論づけられました。


続くセッション「素材と対話のテーブル」では、東京と仙台で飲食店を経
営する株式会社の仙臺テラスで料理長を務める宍戸慶一氏より、ホヤをふんだんに使用したペペロンチーノ、ホヤのステーキ(パイナップルソース)、ホヤ塩辛の三品が提供されました。冷凍によって旨味が凝縮し食感が向上する特性を活かし、ホヤを更に美味しく楽しめるメニューの広がりに、参加者からは感嘆の声が漏れました。



意見交換では、ホヤの普及に向けて、未経験者や若者に魅力を伝え新たにファンを増やす方法と、もともと好きな人にはより高い価値を提供する方法の二つのアプローチに関する意見が多く上がりました。
学生からは、ステーキやパスタなど洋風・にんにく風味のアレンジは食べやすく、従来抱いていた「臭いが強い」という印象が覆ったとの意見や、飲食店や中食が、ホヤを知る入口として、ラーメンスープなどに活用するなど、気づかないうちにホヤを味わう形も有効かつ重要ではないかという提案がありました。
また、会場に参加されていた株式会社スタイルスグループ 佐々木浩史代表取締役からは、ホヤは冷凍することで水分が抜け、旨味が凝縮し食感も向上する特性があるため、家庭でも活用できる事例が紹介されました。串焼きや唐揚げなど居酒屋メニューとの相性も良く、実際に提供している店舗では大好評である事例が示されました。


最期に、本講座のモデレーターである 宮城大学 食産業学群 フードマネジメント学類丹治朋子准教授より、低温減圧技術を用いたホヤパウダーの商品化や、新たな加工・流通の可能性が紹介され、今後は、産業価値と食文化の両立、そして販路拡大が課題であるとまとめられました。


